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ハリケーン体験記 #4

 夜にホテルの外を見た時に、何となく水位が上昇していたように見えたので、イヤな予感はしていましたが、案の定、大変なことになっていました・・・。

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増水 (8/30/05 〜 9/2/05)
 アメリカで売られている車の一部は、盗難防止の装備の一環として、イタズラされた時など、ライトを点滅させて抵抗(?)する事があります。しかし、真夜中に外を見ると、そんな装置を積んだ車のライトが点滅しているではありませんか。誰かがフロントガラスを割った可能性も否定はできませんが、増水による電気系統の異常が、ライトを点滅させたように思います。この光景、しばらくすると、ライトの点滅も無くなった(=完全に車がゴミになった?)ことから、断末魔の叫びのようにも感じられました。
 何はともあれ、そんな外の様子から、水位は確実に上昇しているんじゃないかという感触をつかむことができました。そして、翌朝、恐る恐る外を見て絶句。昨日、たかだか数10 cmしかなかった水位が、1 Mくらいまで上昇していました。

 こんなたくさんの水が一気に流れ込んできたと言うことは、堤防が決壊したに違いない・・・と言うのが直後の予想。数日後に読んだ新聞にも"broken levees"と書かれていたので、この直感は正しかったはずです。
 でも、あの場にいた私の感覚からすると、Katrinaは強い雨をもたらしたと言うよりは、風がメインのような気がします。言い換えるならば、適当な手を打っていれば、堤防の決壊も防げたのではないか、ということ(=人災)。アメリカ政府にとっては、復旧のための出費がかさむのではないでしょうか(それでも、復旧できればいいけれど・・・)。

 

救援活動 (8/31/05 〜 9/3/05)
 今日になって初めて救助用のヘリが飛んでいるのを見かけました。目の前が大学病院なので、まずは病人からどこかへ移送すると言うことなのでしょうが、もう少しはやく対応できなかったものなのか、というのがその当時の率直な感想です。

 例えば中央の写真の赤いボート、聞くところによるとチャリティーボートだったそうです。ボートが5台しかないのに、病院には500人が残されていたようですから、救出が順調に進んだとしても1〜2日かかる計算になります。どうりで私の番がなかなか回ってこなかったはずです。

 

食糧問題 (8/31/05 〜 9/3/05)
 依然、停電・断水が続いていることもあり、どうやって食いつないでいくか、が、大きな問題になってきました。そもそも、ここまで深刻な事態になるなんて想定していなかったから、沢山の食べ物を確保していた訳でもありません。したがって、電気のつかない夕方以降、おとなしく過ごすのは言わずもがな、昼間も、日頃の疲れをいやすべく睡眠時間に当てることにより、空腹感を忘れる努力が必要になってきました。

 ルームチェック(安否確認?)に来たホテルの人に、もはや食べるものがないんだけれど、いつまでここにいなければならないんだ、と文句を言ってみたら、30分後、オレンジとリンゴを持ってきてくれました。しかし、いつもおなかいっぱい食べている私にとっては、あまりに少ない食料で過ごさなければならない状況は、結構つらいことです。金さえあれば何とかなる、と言うのが一般的な資本主義社会ですが、こんな時は、お金もカードも全く役に立たないことを痛感した次第です。

 空腹とはいえ、暇をもてあましていたのもまた事実。暇つぶしを兼ねて、フロアーをふらふらしていたら、黒人の女性が、バタークッキーを食べる?と声をかけてきました。さらに彼女、ジュースとgrits(ひき割りトウモロコシ?)も持っていけ、と言って、部屋から色々持ってきてくれました。おなかにたまる物ではありませんが、感謝の意を込め写真を撮っておくことにしました(左の写真)。

 ホテルにも、救援物資が運び込まれていたようですが、その絶対量は非常に少なく、日に2回程度ちょっとしたパンやケーキとジュースが配られる程度。食料品の備えのない多くの観光客にとっては、厳しい状況だったに違いありません。
 ちなみに、温かい食事を口にしたのは9/2の夜になってから(水とカルシウム塩の発熱反応を利用してパッケージを加熱すると言うもの)。これも、人数分運び込まれたわけではなく、たまたま私がその場に居合わせたから口にできたまでであり、救援活動がなかなか進まない現実を目の当たりにしました。

 市内に住む黒人の家族の多くは、沢山の食料を持ってきていましたが、ビールやアイスクリームを用意するなど、避難しに来ているのかピクニックに来ているのか分からなくなるような人たちもかなりいました。もちろん、停電後にアイスクリームが捨てられていたのは言うまでもありません。ちなみに、テレビや冷蔵庫を持ち込んでいた人もいましたが、彼らがそれらの電気製品と共に避難したか否かは定かではありません。

 

そのほかの出来事
 ホテルの従業員の一人は、夜中にどこかの店から盗み出したタバコなどを、ホテルに軟禁されていた人々に売りさばいていました。一箱あたり$5.20で取り引きしていたところを見ると、彼にとってはいい小遣い稼ぎになったはず。なお、DVDプレーヤーとかカーペットも売りさばいていたと言う話も耳にしましたが、真偽のほどはわかりません。とはいっても、こういった時に略奪が起こるのは、ここアメリカでは、決して珍しい事でもないようなので、この程度のことで驚いていてはいけないのかもしれません。

 

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